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Diary

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英雄と少女

昔々、花の国に英雄と呼ばれた男がいました。
男は何故英雄と呼ばれるのか?その理由は1年前の出来事にありました。
当時、この国は最強だと言われた太陽の国へ喧嘩を仕掛けました。
花の国は花の国でしか採れない薬草の種を太陽の国へ送り続け、
太陽の国は太陽の国でしか採れない花の種を送り続けていました。
しかし、太陽の国の王が代わってから、太陽の国は花の種を一切送らなくなりました。
世界中の全ての花が咲き乱れる花の国にとって、それは大問題でした。
花の国が花の国でなくなってしまうからです。
花の国はどんなに太陽の国へ頼み込んでも、“薬草の種を送らなくする”と言っても、
太陽の国が花の種を送る事はありませんでした。
花の国にある薬草は多くの人が救われる代物。
花の国は優しい人ばかりで、必ず送る事をやめないと太陽の国は分かっていたのです。
なかなか花の種を送らないことに腹を立てた花の国はとうとう怒りを爆発させ、
太陽の国へと喧嘩を仕掛ける事となりました。しかし太陽の国は最強の国。
花の国には到底敵う相手ではありませんでした。そんな時でした。
英雄と呼ばれるようになる男が現われたのは。
男はすぐさま花の国の兵達の指揮をとり、太陽の国へと攻め入りました。攻め入りから3ヵ月後、太陽の国は降伏し、これまでの関係は取り戻されました。
それだけではありません。
太陽の国を負かした事で、花の国が世界1番の強い国となったのです。

「ねえ」

英雄となった男にとある少女が話しかけました。
男は返事をすると、少女の言葉に耳を傾けだしました。

「お兄さんは、自分の国を壊して良かったの? お兄さんはあの国の王子様でしょ?」

男は言いました。“これで良かったんだよ”と。“あの人は僕の大好きなこの国を、苦しめたから”と。
そう微笑んでいました。すると少女は何かを取りに行き、すぐに男の元へと戻ってきました。

「お兄ちゃんの国のお花だよ。少しは元気を出して?」

少女の手には一輪の向日葵が握られていました。
太陽の国でしか咲かないその花を男は握りしめ、涙を流したのでした。
“こうするしかなかったんだ”と呟きながら。


お題:英雄と少女
配布元:選択式御題(http://www.geocities.jp/monikarasu/)
文字数:869

深く深く深く 沈みたい

スチールブルーの空に 純白の雲が彩った世界
その下で僕は水中へとダイブする
飛沫と痛みが全身を包んで
その心地よさを沈んでいくのと同時に感じた
僕の元から離れていく泡を見送りながら
僕の大好きな 水中から見る
ゆらゆら揺れる太陽を眺めて
僕だけの時間は緩やかに過ぎていく
息が苦しくなるまで
もっともっと深く 出来れば地の果てまで
太陽が見えない世界まで
辿り着いた時 僕は納得出来るのかな
君を失った事の大きさを
水中から見る 太陽が好きだと言う
そんな僕に変わり者だと 笑って見せる
君の存在の大きさを
知ったら僕は 君の元に行けるかな

お題:深く深く深く 沈みたい
配布元:選択式御題
文字数:247

あの日まで世界の美しさを信じていた

皆がね、沢山沢山笑って。沢山沢山歌って。沢山沢山お喋りして。沢山沢山喧嘩して、仲直りして。
何の変哲もないささやかな幸せが楽しくて、ずぅーっと続いて欲しいって願っていたの。
だからね。どうして?
私のいない間に色んな所から煙が出ていたの。大好きだった花も灰になって、家も壊れてしまっている。
誰の楽しそうな声も聞こえないの。誰の苦しい声も聞こえないの。誰の悲しい声も聞こえないの。
私はこの場所で独りぼっちになっちゃった。
ねえ、誰がこんな事をしたの?ねえ、こんな事をする必要はあったの?
世界って幸せがずっと続く綺麗な物じゃなかったの?
こんな事をする人はいないってずっと信じて生きた私ってなんだったの?
私は、これからどうやって幸せを知ればいいの?
誰に聞けばいいのかな。この場所を壊した人?何処にいるの?探さないと。
見つけたら同じようにその人を壊さないと。そうでないとまた綺麗な世界が壊れちゃう。
醜い世界なんていらない。苦しいだけだから。
そう誓った数年後、私はもっと世界が美しくない物だって知ってしまった。どっちが本当の世界?


お題:あの日まで世界の美しさを信じていた
配布元:選択式御題
文字数:456

弱すぎた俺を赦さないで よ

晴れすぎだって位に真っ青な空の下。 
雑草や細い木々しか生えていないような、砂漠の一歩手前の場所で俺は死んだ相棒と再会した。
目の前には俺じゃない誰かが作ったんだろう。
風雨にずっとさらされ続けてボロボロになった木の十字架が立っている。
あの時俺はただ砂で埋めて棒を一本突き刺しただけだったから。
今日此処に来たのは全てが終わったからだ。この世界を一回りするという旅。
一回りしたら何か変わると思っていたけれど、思っていた以上に何にも変わらなかったようだ。
人生ってそんな物なんだろうな。
今此処で、お前が好きだった赤いダリアを添えたからってお前はまだ赦さないのと一緒だ。
何年前だったんだろうな?一回りする事に必死で、覚えていた筈の時期も忘れてしまったようだ。
弱虫だったお前の世界を一回りする夢に惹かれて、共に旅に出たんだったな。
何もかもが知らない事ばかりで楽しかった気がした。
その“無知”がまさか俺達を引き離す事になるなんて思わなかった。
この場所は、今はもう大丈夫らしいが盗賊が良く出没するスポットで。
それを知らなかった俺達は、そこに踏み入り一人の盗賊に襲われた。
俺は弱虫なお前を守るべきだった筈なのに、目を切りつけられてしまった。
もがく俺に盗賊は更に攻撃を仕掛けてきたのに、その攻撃をお前は受けた。
盗賊は殺すつもりはなかったんだろうな。
お前のその出血量を見て死んだと思ってすぐに逃げやがった。
その時は死んでいなかったのに、な。
だがあるだけの道具で手当てをしても、近くの町まで運んでも間に合わないのは目に見えていた。……俺はお前を殺してしまったのも同然だな。
この墓だって、もっと立派に作ってやりたかったさ。
お前を守り切れなかった俺よりも、俺を守り切ったお前は強いのに何故死んだんだ。
俺なんかどうでも良かったなんて言ったら怒るんだろうけど、そう思った事もあった。
だからせめてもの罪滅ぼしとして、お前の夢は俺がしっかりと叶えないと、って思って。
そして漸く達成した。だが、それでも俺はまだ弱いままだ。
少しは強くなったとしても、お前よりはまだ弱い。そんな人間だ。
だから頼む。空に溶けてしまったお前に、これだけはどうしても言いたい。
俺があの時強ければお前を守れた。死なずに済んだ。だから俺を赦すなんて思うな。
夢を達成した時、これだけはどうしても言いたかったんだ。




お題「弱すぎた俺を赦さないで よ」
配布元:選択式御題
文字数:968
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